宗学研究部門「宗典資料の蒐集調査・保存並びに曹洞宗の歴史に関する現地研修」実施報告

 宗学研究部門では、『正法眼蔵』や『伝光録』などの宗典及び関連文献の写本・刊本の撮影・蒐集を継続して実施しております。本活動を通じて、宗典に関する研究活動の促進を図ることを目的としています。その際には、近年頻発する自然災害などにより、貴重な宗典を損失してしまうことが無いよう、デジタル画像データによる保存・管理を行っています。将来的には、インターネット等による画像データの公開なども視野に入れ、宗門内外における研究の進展に寄与することも目指しています。

 令和5年度は、宗学研究部門常任研究員3名、同研究員3名が参加し、6月5日から8日の日程で、熊本県において宗典資料の調査・蒐集を実施しました。

 まず、九州地方における教線拡大に務められた大智禅師(1290~1367)の祖蹟である、玉名市の廣福寺などへお伺いし、伽藍等を拝覧させて頂きました。

 次に、寒巌義尹禅師(1217~1300)が開山された熊本市の大慈寺に2日間お伺いし、寺院所蔵文献の調査を実施しました。前年度までの反省点として、調査先で「資料の適切な保管方法を知りたい」というお声を頂き、それに充分に対応できていなかったことがあります。そこで、今回の調査では、撮影による資料の保存に留まらず、寺院の現物資料の長期保存も図ることとしました。

 そのために、長期保存に適した、中性紙で作成された封筒に資料を封入し、資料名等を表書して箱に収納しました。今回の調査では、約90点の資料を整理し、重要なものは全文の撮影も行いました。合わせて、封筒の表書を整理することで、資料目録を作成することも視野に入れております。

 加えて、大慈寺の伽藍も拝見させて頂きました。中でも仏殿は、本尊様が平成28年(2016)の熊本地震からの復興事業の最中であり、当時のお話と合わせて、改めてその被害の大きさを実感しました。また梵鐘は、義尹禅師による弘安10年(1287)の銘文が残る宗門最古のものですが、地震で傷がついたことなどもご教示頂きました。

 最後に、熊本県立美術館に寄託保管される、廣福寺文書(国指定重要文化財)の調査・撮影を実施しました。道元禅師自筆(1200~1253)と伝わる『正法眼蔵』「行持」下巻・「坐禅箴」巻や、大智禅師自筆の『宝慶記』等の貴重資料を拝見することができ、大いに示唆を得る事ができました。

 今後は、これらの調査結果を活かした研究成果の発表、並びに宗典資料の調査・保存活動の継続、さらには画像データの公開に向けた検討を進めて参ります。  最後になりましたが、調査の際に特にお世話になりました、大慈寺様、廣福寺様、熊本県立美術館様、その他調査にご理解とご協力を賜りました全ての方に厚く御礼申し上げます。