未来創生研究部門

1:部門の大綱

未来創生研究部門は、2020年度に実施された曹洞宗総合研究センター(以下センター)の改組によって設立された新部門です。本部門は、社会的な動勢や傾向を踏まえた上で、寺院の持続的な維持や進展に資する調査研究を進め、曹洞宗教団のよりよき未来に寄与することを主な使命としております。

2:研究の基本指針

本部門は、社会的なまなざしをもち、曹洞宗教団が現代および未来に直面すると考えられるさまざまな課題について、その超克に資する調査研究を進めてまいります。特に、昨今、社会通念になりつつある、「ニューノーマル:新たな常態」を指標とし、従来からの変革を余儀なくされる中で、これからの寺院・僧侶に必要と目される諸要素を探求する方針です。扱う課題は多岐に渡りますが、かねてよりセンターが行ってきた、「過疎化問題」「災害地支援」「自死問題」の3種から着手いたします。最終的には、これまでセンターが行ってきた研究成果や刊行物の精査・再検討を進め、向後の情勢に適う、「寺院持続のための情報プラットフォーム」を構築する予定です。

3:研究報告

本部門では、「ニューノーマル:新たな常態」を指標とし、「過疎化問題」「災害地支援」「自死問題」をもって研究活動の端緒を開き、各課題に関する考察を進めてまいりました。それぞれの研究活動における内容や進捗については次のとおりです。

過疎化問題

近年、過疎化の加速度的な進展が叫ばれ、人口減少社会の到来が予測されている。不可避の困難が想定されている以上、当該状況下における寺院の持続に関する具体的な方途を策定し、現実的な実施策として構造化しておくことが必須の要目となる。本研究の目標は、こうした小人口時代における寺院持続の具体的な方策を創造・提示することである。特に、従来「寺院」を中心に考えられてきた観点を転じ、「地域社会」を基準とした立場から、寺院にCommon(共有資源・共通資産)としての重要性・特異性を見出し、地方創生・地域活性に連動した新たな可能性を創出する。

災害地支援

寺院が関係し得る各種の社会支援活動、中でも災害支援に焦点を絞り、当該活動をとおした寺院の公共的価値を探求する。特に、過疎化などによって縮小の一途を辿る行政サービスに代わる、地域のハブ(拠点)として機能し得る寺院の形態や、その可能性について調査・研究を行う。

自死問題

我が国の自殺者数は平成24年、15年ぶりに3万人を下回って以降、減少の一途をたどってきた(警視庁自殺統計)。しかし2020年、コロナ禍の社会情勢の中、自殺者数は急速に増加に転じている。自殺の理由は極めて複雑だが、多くの場合複合的理由が絡まり合い「生きにくさ」を抱え込み亡くなっていくという見方がある。(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク調べ)本研究では、こうした「生きにくさ」を抱える人々に対して、教団や寺院、僧侶が関わる意味と意義を再確認し、具体的な実践活動のモデルを作り、提供することを目的とする。